転倒が増えて、不安になる

90になる父と同居しています。

年々、足腰が弱くなり、昨夏から階段の上り下りが出来なくなりました。

時々転んでは、頭などあちこちぶつけて出血しています。

血を見る経験がほとんどない私は、その度に、どうしよう、救急車を呼ぼうか、とアタフタ。本人も不安になり、施設に入ることを考え始めました。

しかし噂通り、特養老人ホームは待機者が多く、申し込みの時期も決まっているので、代替案として、その時は民間の老人ホームを見学しました。

お部屋は良かったのですが、食堂が別の階にあるため自力で歩行器を使って行く自信がなく、入居には至りませんでした。

特別養護老人ホームに申し込む

秋に特養の申込受付があったので、応募しました。

案の定、待機は千人以上と自治体から手紙が届き、完全に諦めました。

自宅で手を取り合って、頑張っていこう、と決意も新たに。
ところが年が明けてから、特養から直接電話で面談の案内が来ました。よく聞くと、人気の特養でも、個室には空きがあるそうです。

もう気持ちは離れていたのですが、話を聞いてからお断りしてもよいか、と面談に来ていただきました。

とても感じの良い担当者で、心が動きます。でも、面談と医師の診断書の結果によっては、入居できないこともあるそうで、はやる気持ちは抑えます。

揺れる思い

私は一人っ子で、母が10年前に他界しています。

母の最後の入院以降、父の面倒を見て、母の死後は実家をリフォームし、父との同居を始めました。男性は妻を失うと長くは生きない、という俗説もあるので、同居は長くないだろうと踏んでいたいましたが、いつの間にか10年です。

もう十分親孝行しました。ここで離れて暮らすようになっても良いのでは。

でも、生まれてからの私を知る人は、もう父しかいません。ぶつかることもありましたが、唯一の肉親です。子供は自分のことで精いっぱいで、私は視野に入っていませんから。

できるなら、最後まで面倒をみてあげたいと思います。でも、昨日のような流血事件(耳を引っ搔いて流血。体中の皮膚が薄く弱くなっているのでしょう)が起こると、すぐに専門家が対応できる環境の方が、本人には安心安全なのだ、と痛感します。

いずれ訪れる最期をひとりで迎えたくない

中学生の時、祖母が亡くなりました。新幹線で母の実家に向かう車内で、母は父にもたれて泣いていました。滅多に泣かない人だったので、衝撃でした。それを見て、自分がそういう状況になった時、もたれる相手が欲しいと思いました。

そして結婚しましたが、残念なことに傍らには今、誰もいません。

ひとりで耐えるしかないんですね。思惑おもいっきり外れました。

父の最期をひとりで受け止めるのは辛すぎます。

施設にいれば、担当の方がいてくれて、共有してくれるでしょう。

施設への引っ越しは、最期のお別れを少し緩和することになるかもしれません。

スカパーが入居を左右する

面談から1か月後、入居の許可が下りました。

介護タクシーを呼んで、さっそく見学に行きました。

実際に入る部屋、トイレ、お風呂など見せてもらい、説明を聞きます。

お部屋は7畳と狭いですが、備え付けの家具もあり、必要十分です。

ただひとつ、父には譲れない条件があります。

熱狂的なプロ野球ファン。昨今、地上波テレビでは試合の中継が少なくなっています。

それで、現在スカパーを契約して観戦を楽しんでいるのです。

その楽しみが奪われるのなら、入居はしない、と。

多分却下されるだろうと聞いてみると、ベランダにパラボラアンテナを付ける人もいるそうで、スカパーも問題ありませんでした。

これですべてクリアです。

3月は大忙し

入居日は調整中ですが、来月には実現します。

衣類など買いそろえて、油性マジックで記名して…。いろいろな準備が待っています。

本人は何も出来ないので、私ひとりでやるしかありません。まあ、今までもやってきたことですし。

春から社会人になる次男の引っ越しもあるので、3月は大忙しです。

その大波が過ぎた後、家に残るは私ひとり。

何を思うのでしょう。

家族に振り回されて、自分の時間が取れない時期、「早くひとりになりたい!」と叫んだこともありました。でも実際に実現するとなると、一抹の寂しさが。いや、一抹どころではないですね。相当がっくりきそうです。

一人暮らしは結婚前にしていたのに、今は不安と寂しさと面倒くささで押しつぶされそう。

転職してからは在宅勤務が多く、出勤しても出向先なので、業務連絡以外の会話は、ほぼない。

今後は帰宅しても、話す人がいなくなります。

元々コロナに感染しても、会話が少ないため家庭内感染がなかった我が家ですが、物理的に話し相手が存在しなくなります。

どうなるのだろう、私。テレビに話しかけてしまうのでしょうか?

私自身も次のステージへ

松原惇子さんの本に、老人ホームの入居者に施設の感想を聞くと、みな悪いことは言わない、とありました。負の意見があっても、彼らには他に行く所がないから、我慢するしかないそうです。

そんな思いを父にはしてもらいたくないので、いつでも戻れるように、しばらくは私はこの家に残るつもりです。息子にも帰る場所があった方がよいでしょう。

みんなが落ち着いた秋ごろ、実家を売却して、私は小さい家を借りようかと思います。

それまでの間、少しずつ断捨離しなければ。面倒なことは、年々億劫になってきていますが、これを乗り切って次の人生のステージに進まないと。

自分ひとりだけのための生活。

ゆっくり模索していきます。

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キリコ

麻葉キリコ。60代。子供は独立で一人暮らし。ほぼ在宅勤務。趣味は読書、お笑い全般の鑑賞、下手な楽器演奏。 資格:通訳案内士、世界遺産検定2級、旅行業務取扱主任者

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